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eカーゴバイク配送が始まる

ホールフーズマーケット、マンハッタン・ブライアントパーク店。昨年春のロックダウン中は店舗をeコマースフルフィルメントセンターとして使い、台車にオーダーを載せて、人力または自転車で配送した。Photo:Sachie Hirayama

文:平山幸江

コロナ感染拡大によって昨年3月後半から2か月以上、実質的にロックダウン(都市封鎖)となったアメリカの大都市では、eスクーター(電動キックスケーター)がブームとなった。筆者が住むマンハッタンでも、在宅勤務でガランとした街中を猛スピードでeスクーターで走り抜ける人がよく目についた。公共交通機関での他人との接触を避けたい、引き籠りの生活にウンザリだが自由に旅行にも行けない、という理由で増え、その上、地方自治体がマイクロトランスポテーション政策を進めるために規制を緩め始めたこともあり、このことを当時日経MJのコラムに執筆した。あれから約1年、今度は電動自転車によるラストマイル配送、eカーゴバイク(電動貨物自転車)が注目されている。

アメリカでは昨年のロックダウン後にeコマースショッピングが急増し、特に生鮮食品の買物のオンラインシフトが顕著で、企業によってはeコマース売上が前年の6倍、7倍以上も増えた。売上が増えれば当然、配送も増える。しかしオンライン需要が特に多い大都市圏では、道路の混雑、荷降ろし用の駐車スペースの不足、交通規制の厳しさなど、消費者に届けるためのラストマイル配送にはいくつものハードルがある。ワシントン大学の研究によると、大都市圏で配送トラックは配送時間の28%を駐車スペースを探す時間にあてているという。もちろん環境にも良くないことは明白だ。

現在、大都市圏でのラストマイルの一般的な配送方法は、①配送先の近くにトラックが駐車できる場所を確保し、その路上や歩道で荷物を台車に積み替え、配達員が台車を引いて個々に配達するか、②店舗や倉庫に配送してそこから台車か自転車に台車をつけて配達する、だ。マンハッタンの高層ビル街でこういう台車を引く人々を見るたび、ここは本当にマンハッタン?今は21世紀?と思ってしまうが、これが時間通りに低コストで配送する、もっとも現実的な方法なのだろう。

しかし、こういうベタな現実にも革新を怠らないアマゾンは2019年からUPSおよびDHLと提携して電動自転車に台車をつないだeカーゴバイクを100台テスト稼働させている。1台には最大45パッケージを積載でき、人が自力でこぐ自転車より2,3倍多い。

eカーゴバイクを効率的に運営するため、アマゾンはマイクロハブ(デリバリ―ステーション)網を大都市圏内に構築中だ。マイクロハブとは、倉庫やフルフィルメントセンターから最終消費者に配送する手前に、中継する小型の施設で、ここで住所ごとに細かく仕訳け、個別の貨物自転車に積み替えて最終配送へと向かう。

無店舗ゆえに倉庫網が必要なアマゾン。ウォルマートを始めとするチェーンストアが数千という店舗網からEコマースオーダーをどんどん出荷している現状と比べると、今までのようにEコマース王者として独走していた時代が変わりつつあるような気がする。


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